【年金5大改正】①年金受給開始が5年拡大

繰り下げ受給の上限年齢の拡大で最大増加率が42%から84%に大幅アップしました。65歳以降も働いて受け取りを遅らせることで老後資金に余裕ができます。

年齢60歳61歳62歳63歳64歳65歳66歳67歳68歳69歳70歳71歳72歳73歳74歳75歳
増減率76%80.8%85.6%90.4%95.2%100%108.4%116.8%125.2%133.6%142%150.4%158.8%167.2%175.6%184%

年金の受給開始は原則として65歳からですが、希望すると、受給開始年齢を選択することができます。この受給開始年齢が、改正により、「60歳以上70歳まで」から「60歳以上75歳までに拡大されました。65歳より前、60歳以上64歳11ヵ月の間に受給開始することを「繰り上げ受給」、65歳より後、66歳以上75歳までに受給することを「繰り下げ受給」といいます。老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを受給する人は、繰り下げ受給の場合はどちらか一方のみ繰り下げることが可能です。繰り上げ受給の場合は両方セットで繰り上げる選択しかありません。

この制度の最大の特徴は、繰り上げると年金が減らされ、繰り下げると年金が増えること。繰り上げは1ヵ月ごとの0.4%減額され、繰り下げは0.7%ずつ増額されるます。今回の改正で受給開始上限が5年延長されたため、受給開始を遅らせると本来受給額と比べた増額率が、最大42%から84%と大きく増えることになりました。例えば、基礎年金満額を75歳まで繰り下げると、本来の受給額と比べ年間で約65万円増額され、その年金を一生涯受け取ることができます。受給開始を遅らせるだけで年金が増額する繰り下げ受給は、メリットが多い制度に感じますが、配偶者などの扶養家族の事情や、資産状況、働き続けるのかなど、さまざまな事情によりデメリットもあります。年金をいつももらい始めるかの選択は、経済状況を確認しつつ計画的に考える必要があります。

年金を繰り下げると実際にはどの程度の金額が増えるのでしょうか?夫の年金、妻の年金を繰り下げたケースについてそれぞれ見ていきましょう。


65歳受給した場合70歳から受給した場合
基礎年金78万円/年間110.76万円/年間
厚生年金96万円/年間136.32万円/年間
174万円/年間247.08万円/年間
メリット注意点
70歳からは月20万円年金を確保でき、生活費が安心65歳~70歳までの生活資金の確保が必要になる。基本生活費年間240万円と想定すると5年で1200万円を確保するため貯蓄を切り崩すか、月20万円の収入が必要

65歳受給した場合75歳から受給した場合
基礎年金78万円/年間143.52万円/年間
厚生年金10万円/年間10万円/年間
88万円/年間153.52万円/年間
メリット注意点
夫が亡くなった後、夫の老齢厚生年金96万円の3/4の72万円の遺族年金を受け取れる。自分の年金と合わせて225.52万円を確保できる夫が年金の繰り下げはせずに65歳から年金受給開始すること繰り下げ期間75歳までは、その収入で暮らす前提のこと

同じ年齢の夫婦がそれぞれどちらかの年金を繰り下げた場合の例です。ケースⅠは夫の老齢基礎年金・老齢厚生年金を70歳まで繰り下げた場合。本来の受給額と比べて約73万円増額し、247万円となります。月20万円の年金を確保できるため、70代以降の生活資金安定に繋がります。但し、繰り下げ待機中70歳までの5年間を妻の年金だけで賄うことになります。基本生活費を年240万円で試算すると5年で1200万円を補填する必要があります。妻の年金額が5年で440万円のため、760万円不足になります。その分資金を確保するためには貯蓄を取り崩すか、月13万円の不足分を働いて確保する必要がります。

ケース2の場合は夫お年金は繰り下げずに妻が老齢基礎年金のみ75歳まで繰り下げます。繰り下げにより、75歳から老齢基礎年金の受給額が約65.5万円増額し、総額が約153.52万円にになります。夫婦合計の受給額は約327.5万円となるので75歳からの生活費はかなり余裕ができます。また、夫が妻よりも先に亡くなった場合、妻は夫の老齢厚生年金の4分の3の72万円を遺族厚生年金として受給できる。これに自分の年金受給額を合わせると約225.5万円を生活費として確保できます。このケースの注意点は夫の年金を繰り下げないことです。夫の年金ベースに夫婦で暮らす大前提だからです。それでも基本生活費は年56万円不足するため、アリバイトなどで補う必要があります。