年金5大改正 ②短時間労働者の厚生年金加入要件の緩和

パート・アルバイトなどの短時間労働者が、年金を2階建てにできる要件が改正により緩和され、年金を増額するチャンスが広がりました。

社会保険に加入する要件を満たすためには

対象要件2016年10月~2022年10月改正~2024年10月改正~
事業所事業所の規模常時500人超常時100人超常時50人超
短時間労働者労働時間週の所定労働時間が20時間以上変更なし変更なし
賃金月額8.8万円以上変更なし変更なし
勤務期間継続して1年以上使用される見込み継続して2ヵ月以上使用される継続して2ヵ月以上使用される
適用除外学生ではないこと変更なし変更なし

会社員が加入する厚生年金は常時雇用されている人であれば、必ず加入する義務があります。また、アルバイトやパートの人は、一定の条件を満たすと加入義務が発生する形となります。この加入条件の対象者が拡大しつつあります。2016年10月から、常時500人超の働く人がいる事業所の場合「1週間に20時間以上働いていること」「月額8万8000円以上」「1年以上継続して働く見込みがあること」「学生ではない」という条件を満たしていれば、厚生年金に加入できるようになりました。これにより、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを受給できるようになります。

2022年10月からの改正で勤務先の規模が常時500人超から100人超まで引き下げられ、働く人の要件も1年以上から、継続して2ヵ月以上働く見込みがあれば、社会保険に加入できるようになります。また、2024年10からは勤務先の規模50人まで引き下げられ、さらに加入できる要件が緩和されます。但し。今まで不要の基準年収130万円以内で働いていた配偶者のいる家庭では年収106万円超になると、今まで負担のなかった社会保険料が発生することになります。一見デメリットに感じる点ですが女性の方が比較的寿命が長いため厚生年金に加入して自分の年金を増やすのも方法のひとつです。また、会社員として働いてきた人も定年後にはアルバイトで緩く働きながら厚生年金を増やしていくということもできます。

厚生年金保険料増える年金額(目安)
20年間加入8,100円/月10万8,300円/年×終身
10年間加入8,100円/月5万4,100円/年×終身
1年間加入8,100円/月5,400円/年×終身

社会保険に加入すると年金の受給額が増えるほかにも受けられる公的保障の範囲が広がります。実際にどんな保障を受けられるのかを解説します。

「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つの年金を受け取れるようになる

病気やケガなどで、障害状態と認定された場合にもらえる年金が2階建てになり、「障害厚生年金」部分が上乗せになる。障害厚生年金は、障害等級3級から受けられ、3級に達しない軽度の障害では、「障害手当金(1時金)」受け取ることができる

被保険者が亡くなった時に遺族が受け取れる年金が遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つになる

病気やケガの療養で仕事を休んだ日から連続して3日間を過ぎた後、4日目から仕事に就けなかった休業期間中、給料の2/3相当の給付を受けられる(支給開始から通算で1年6ヵ月まで)

社会保険に加入すると、公的年金と医療保険(健康保険)での保障が受けられるため、国民年金や国民健康保険より保障が手厚くなり、受けられるメリットは大きくなります。

厚生年金に加入するということは同時に会社の健康保険にも加入することになります。片方だけ加入することはできません。これらの社会保険に加入することでどんあメリットがあるのでしょうか?主に2つのメリットがあります。1つ目は老後の保障以外の年金を受け取れることです。たとえば、障害がある状態になった場合、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が受け取れるようになります。障害厚生年金は障害基礎年金の対象外の障害等級3の場合でも受け取ることができます。2つ目は健康保険の保障の手厚いサポートを受けられることです。例えば、病気やケガなどで4日以上会社を休んだ時に3日間の待機期間後、給与の3分の2相当の給付金を受け取ることができます。(最長1年6ヵ月)

国民年金は60歳までしか加入できませんが、厚生年金に加入できるようになれば60歳以上70歳になるまで働くと、その分、老齢厚生年金を増やすことができます。

国民年金は60歳未満が加入する制度のため、現在は加入していない

年間給与150万円
厚生年金の保険料負担なし
年間給与150万円
厚生年金保険料1万1,600円/月
13万9,200円/年
増加する年金額3,200円/月
3万8,400円/年

パート勤務している人が、社会保険へ加入することになると、どのくらいの保険料の支払いで、どれほど年金が増えるのかの例です。年間保険料は13万9200円で5年間加入すると増える年金額は年額3万8400円です。一見すると年間保険料の方が増える年金額より多いため損をしているように感じますが増える年金は一生涯受け取ることができます。例えば、このケースの人が65歳から80歳まで受給した場合は増加年金額は61万4400円と保険料総額は下回りますが83歳まで受給すると69万7600円と保険料を上回ります。